幸福な王子

エルメスのナイルの庭ってどんな香りなのかな。ボトルのグラデーションがきれいだなって時々欲しくなる。
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この香水の香りにを確かめてみたいのはオスカーワイルドの「幸福な王子」のお話を思い出すから。
金の肌とインドのサファイヤの瞳を持った王子様でなくて、お使いをした楽しいことが大好きな元は惚れっぽくてちょっとだけ自分勝手だったツバメを。
ツバメはエジプトに帰るつもりだったのです。パピルスの茂みやメムノンの神殿でゴージャスなライオンの咆哮を聞くのを楽しんだり神殿から星の瞬くのを見るのが大好きだったから。それから愉快な友達がもうみんなかなり前に国に戻って待っているから。夏中細腰が優美なミステリアスな葦を追いかけて出発を随分遅らせてしまっていたのです。
夏の恋にあっさりさよならを言えるドライなツバメが、凍え死ぬ運命に気が付きながらもとどまったのは王子への敬愛からでした。
おしゃれなツバメが道端のパンくずを拾って食べたり、貧しく悲しい人々への直視を強いられるなんてまたそれを自分が受け入れるなんてツバメ自身も思い及ばなかったろうと思うのです。王子の立派な杖を飾る大きなルビーを病気の子供と貧しい母親に届けるのは出来ても、王子の美しい青いサファイヤの瞳を一つまた一つとえぐって取りだして運んだのは王子が頼み訴え命じたから。
ツバメが泣いて嫌がりそれでも王子の願いを全て叶えるシーンに胸が痛みます。
王子の目が見えなくなった時ツバメはエジプトを捨てます。とどまることを決めたのです。そして王子が見たいであろう更に哀れな人々を数えて王子の求めるまま黄金の肌をはがして与える手になるのです。
王子はただの汚い彫像になりました。凍えるツバメはパタパタと翼を震わせて暖を取りただの一度も抱き締められることもありませんでした。それでもツバメは王子を愛しまた満たされていたのでした。
たくさんの人の中で王子の声を聞いてくれたのは人ではなく小さな渡りの鳥でした。
by donburakon | 2014-02-08 23:11 | 香水 | Comments(0)