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火の記憶

私が3歳妹が1歳の頃小さな織り屋をしていた我が家は火事を出して廃業したのでした。
「職工さんと取引先になんとか払って母の実家に戻った時は小銭を含めて3千円だけだった。
家も土地も機械も全部売っちゃった!すっからかん。
でもね、皆な無事だったのだし、織り屋は辛い仕事で先細りだったからイイのよってふっきたのョ。」
母が何度となく話してくれました。
父は織り屋をしていた遠い親せきに請われて高校を卒業した後養子に入ったのですが、養家はいざこざが多かった上に話と違い借金まみれで目の前が暗くなったそうです。
だからいっそ清々した心持ちもあったかもしれません。
離れに一間間借りして30代半ばの父と20代終わりの母は新しくやり直したのです。

小学生の頃私たち姉妹は本もおもちゃもあんまりもっていなかったけれど寂しくなかった。
なんの苦しみも悲しみも心配もなくって、子供時代を過ごせました。
お正月に親戚の家に行く時、車がないから近所の印刷屋さんが2tトラックを貸してくれて乗って行ったけ。
おもちゃも洋服も親戚のおばさんがよくくれたのよ。
そんなのちっとも恥ずかしい事でもないのよ。
両親や私たち家族を助けてくれる様々なもの、方がたに守られて育ててもらえたのです。

災害で痛めつけられた方がたを思うと慰めの言葉が見つかりません。
けれど3千円の財産からスタートした父も母も今は笑っています。
余裕のある暮らしはとうとう手に入らなかったかも知れませんが、私達娘二人ちゃんと大きく育ったわ。
生きていけばいつかはみんなで笑える日がくる、きっと。

ストーブから火が出たの。
寒い日に父と母は幼い子だけにして夜なべ仕事をしていた。
黄色い煙が織屋に入って来て驚いて工場から飛び出て母屋が燃え盛っていたのを見たそうです。
私と妹は小さく固まってしゃがんでいたそうです。
私は白い煙がす~っと生き物みたいに流れるのを覚えている気がします。
誰も言わない事ですが私がストーブで遊んだのではなかったのかしら。確かめようのない昔です
by donburakon | 2013-11-17 20:28 | 削除できなかったもの | Comments(0)