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ジョー・ベルの花

グラジオラスは子供の頃は好きではなかった。
初夏に咲くこの花は雨や風ですぐポキンと折れて私に体裁悪い思いをさせた。
毎年支柱を立てて縛らないとと思いつつすっかり忘れてしまって反省させてくれる花だった。
植物にうっとりするのも、イライラするのも家族では私一人。
私の両親と妹は植物に関心が無く、丈の高い花を手前に植えて奥に低いのを植えても平気だったし、咲き終わった花がカラカラになって残っていても構わなかった。
多分眼に入っていないのだと思う。
私は自転車で緑花木センターと呼ばれている遠くの農協に出かけ、お小遣いで肥料や苗を手に入れていた。そんな中学生だった。

グラジオラスは剣の形の百合という意味だそうだ。
色はシャーベットのような繊細な淡さがある。
だから丈が高く個性のある形でもあんなに優しい雰囲気が出るのだろう。
球根は大きくなく若干平べったい。
近所で上手に育てている人がミカンの網に入れて乾かして保存してあったのを下さった。
この辺りはどの家も同じ花で庭が構成されている。もらいっこなのだ。

洒落てる割には弱っちいこの花を私は軽く扱っていた。好きでなかったから。
でもカポーティのティファニーで朝食をの中でこの花が出ていて少し見る目が変わった。
ヒロインのホリーの密かな親衛隊ともいえるジョー・ベル。
ニューヨークの古いバー”ジョー・ベルの店”のオーナーだ。
彼の店は昔堅気のエレガントなバーだから生花は欠かせない。
ジョーはグラジオラスを活けながらホリー・ゴライトリーの心配をしていた。
彼女をあの娘と控えめに呼んで。
名前一つ発声するのをためらわす、そんな女の子のお話は今でも人気があるだろうか。
by donburakon | 2013-06-23 12:58 | 本・映画・アート | Comments(0)